窓辺に、ふと漂う甘い香り。金木犀だ。庭の小さな木に、橙色の小さな花が一斉に咲き乱れている。秋の訪れを、こんなに優しく告げてくれるものはない。
子供の頃、近所の路地を歩けば、鼻をくすぐるその匂いに、心が躍った。学校帰り、友達と「秋だね!」と笑い合った記憶。夏の暑さが去り、涼しい風が頰を撫でる今、金木犀は静かに季節の扉を開ける。
今日も散歩道で、花びらが舞うのを眺めながら深呼吸。ほのかな蜜の甘さ、遠い記憶を呼び起こす。落ち葉の絨毯が敷かれる前に、この香りを胸いっぱいに。秋は、こんな小さな喜びから始まる。